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Posted by ミリタリーブログ  at 

2012年06月10日

FOB食堂

はじめに

現地時間の6月2日、夜。アフガニスタンでイギリスSASが人質救出任務を成功させたそうです。イギリス人女性1名を含む、合計4名の民間人が救出されました。誘拐犯たちは殺されたそうですが、メディアにより人数が異なります。「4人」やら、「8人」やら、「11人」やら、いろいろです。米軍特殊部隊DEVGRUとの合同任務だったという情報もあります。
ともかく、任務成功、おめでとうございます。さすがです。

それでは、アフガン記のつづきをどうぞ。

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昼食の時間になった。ここはバグラムとは違って、敵に近い前方なので、あまり良い食事は期待できない。ラッション(携帯糧食)より美味ければいい。そう思いながら、銃をロッカーにしまい、鍵をかけ、何人かの同僚たちと一緒に食堂へ行った。

食堂は結構大きかった。面積は、縦50m×横30mの1500㎡くらいだと思う。社員食堂や学生食堂のような感じで、入ると、手を洗うための洗面台がいくつかある。ハンドソープも設置してあり、しっかり手を清潔にできる。下痢を予防するため、手洗いが推奨されていた。私も必ず手を洗った。衛生兵が不注意で下痢になったら面目ない。

手を洗い、備え付けの紙で手を拭くと、食堂従業員のいる食事配給のところまで進む。トレイや食器を取り、メニューを見たら、心が躍った。バグラムの食事に匹敵しそうなくらい豪華なメニューだった。しかも、いくつか選択肢がある。例えば、ハンバーグ、フライドチキン、ビーフステーキから1つ、パスタ、ライス、フライドポテトから1つを選び、従業員に告げると、それらを皿に盛ってくれる。

従業員は、やはり、インド人やネパール人やアフガン人だった。そこの管理者として、一人の南アフリカ人の色の浅い黒人がいた。食堂全体の管理者はフランス人の中年男性だったが、厨房にいたり、食事配給場所にいたり、忙しそうにしていた。

メニューを皿に盛ってもらったら、サラダバーとデザートバー、そしてチーズバーがある。文字通り、好きなだけ取れるし、種類もいくつかある。サラダはグリーンサラダ、ラディッシュ、豆サラダ、他。デザートはケーキ、ムース、ピーカンパイ、みかん、他。チーズはカマンベール、ロックフォール、チェダー、他。
スライスされたフランスパンも自由に取れたし、マヨネーズ、ケチャップ、タバスコやウスターソースなどの調味料もバリエーションがあった。そして、缶ジュースやミネラルウォーターもあった。コーラやスプライト、そしてファンタ・オレンジなどがあったが、缶ジュースに関しては、「1人1缶のみ」という注意書きがあった。

申し訳ないが、ジュースのそばに見張りでも立たせておかないと、必ず誰かが余分に持って行く。注意書きは効果がない。しかし、私自身はそのルールを守った。糖分をとり過ぎるのは健康に良くないからだ。

こうして、メニュー・フルコースをトレイに載せ、長いテーブルの席につき、食べる。まさか、FOBでこんなに質量のすばらしい食事ができるとは思ってもみなかった。何が一番嬉しかったかというと、豊富なサラダだった。野菜はとても健康にいい。癌になる率が減少するとテレビで聞いた。

コルシカ島の駐屯地の食堂では、サラダがほとんど出ず、揚げ物など、油っこい物が多く出る。我々の体に何かを発病させたいようだ。戦場の食事の方が美味しくて健康に良いなんて信じられない。

われわれは感動しながら、その食事に舌鼓を打った。すると、ナチェフが言った。
「ここの味に慣れたら、もう連隊の食堂ではマズくて食べられなくなるぞ。」



我々が談笑しながら食べていると、6名の、私服を着た集団が入ってきた。青のジーパンやベージュのカーゴパンツをはき、黄土色のフリースジャケットや紺色のジャケットを着ている。我々フランス兵は、食堂へは、ちゃんと迷彩服上下を着用しないと入れない規則になっていた。

「この人たち、もしかして・・・。」と、私は思った。皆、白人で髭を蓄えている。鼻髭だけの者もいれば、アゴ全体に髭を生やした者もいる。身長は170㎝から190㎝くらいとまちまちで、体格も細身から中肉まで、いろいろだ。

何人かの腰には、ヒップホルスターに収まったベレッタM9拳銃が見える。使い古されており、金属部分の色が落ち、灰色になっていた。

私はナチェフと他の同僚にささやいた。
「見ろ。米軍特殊部隊だ。」

皆で憧れのまなざしを送った。我々の誰もが、特殊部隊になることがどんなに大変なことか理解している。その選抜試験をクリアして、特殊部隊として活躍している彼らは当然優秀だ。偶然とか、人手不足なんかで、特殊部隊になれるわけがない。それはどの国でも同じだろう。米軍でも、仏軍でも、英軍でも、自衛隊でも。

私は米軍特殊部隊をチラチラ見つつ、芸能人かスポーツ選手を見ているかのように、ワクワクしながら食事を続けた。「近々彼らに話しかけよう」と思った。そして、食べ終わると、トレイを返却口に置き、食堂を出た。アフガンでは、普通の食堂ですらエキサイティングだ。

ちなみに、朝食はイギリス式朝食で、ソーセージ、スクランブルエッグ、ベーコン、シリアル、フルーツ、クロワッサン、フランスパン、バター、ジャム、コーヒー、紅茶などがあり、ボリューム満点だった。
FOBトラでは、朝昼晩、毎食が大きな感動だった。


↑食堂の従業員たち。普段は屋内の調理場で調理をするが、この写真を撮った日は何かの祭典でバーベキューがふるまわれた。肉だけでなく、バーベキューコンロにも注目。鉄杭を溶接して作った土台、ドラム缶を半分にカットした本体、バスチョンウォールの金網を切り出したグリル。フランス軍おなじみのバーベキューコンロだ。

つづく

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SAS本の金字塔



米軍特殊部隊





  


Posted by 野田力  at 07:00Comments(0)アフガニスタン