2012年07月20日

アーマー組み立てPart1

はじめに

小中高校など、学生にとって夏休みシーズンに入ります。夏休みシーズンのあいだ限定で、アフガン連載の更新を5日おきにしようかと思います。ですので、次回更新は25日を予定しています。

それでは連載のつづきをどうぞ。

――――――――――

「アーマーにポーチを装着しろ。それで今日の仕事は終わりだ。」
個人装備各種を受け取ったあと、上官が言った。

我々はそれぞれの部屋へ行き、アーマーの入ったバッグをつかみ、表へ出た。狭い室内よりもスペースがあるし、太陽のおかげで明るい。フランス人のぺリシエ伍長と一緒に作業をした。

ぺリシエは南仏ニース出身で、フランス正規軍の試験に落ちたので外人部隊に入隊した。私より2年あとに入隊した後輩だが、フランス語でわからないことがあれば、私は彼を頼った。嫌な顔をまったくせず、わかりやすく教えてくれる。

当然、彼はフランス語を母国語とし、口が達者なので、新兵のころ、上官からの命令に「なぜそんなことをやる必要があるのですか?」と、頻繁に質問をぶつけた。外人部隊では禁句だ。当然、懲罰のトイレ掃除や腕立て伏せをさせられる。そのたびに、「こんな部隊、脱走してやる」と文句を言うが、結局とどまり、同じ禁句と懲罰のプロセスを繰り返していた。

やがて、いくらシゴかれても、改心も脱走もしないぺリシエの根性を上官たちは認めた。一転して所属小隊のムードメーカーとなり、笑いの中心になった。いろんなことを豪語するが、実際にはへタレなところが滑稽だった。

2007年、ジブチに派遣されたとき、近くに駐屯しているアメリカ軍について話をしていたら、「おれは英語が話せるんだぞ」とぺリシエが自慢を始めた。

「じゃあ、英語で会話しよう。Hi, what’s your name ?(やあ、名前は何 ?)」
私が言うと、ぺリシエは期待に応えた。
「Hello. Yes...yes...yes. Fly away ?(ハロー。はい・・・はい・・・はい。飛んでいくの?)」

“Fly away”に私は大笑いした。名前を聞いているのに、なぜ「飛んでいく」という言葉が出てくるのだ!
今やぺリシエは立派な伍長・衛生兵になり、アフガニスタンでは、中隊長付きの衛生兵を務める。

私はぺリシエと、パラクリート社アーマー「RAV」の組み立てを始めた。バッグのジッパーを開けると、コヨーテタン色のアーマー本体が入っており、バッグの内壁には、MOLLE(モーリー)システム対応のモジュラーポーチがズラッと並んだ状態で、取り付けてあった。ポーチ類はすべて「スモークグリーン」という灰色に近い緑色で、アーマー本体の色とは異なる。

私はぺリシエに聞いた。
「アーマーとポーチの色が違うのはなぜだろう?」
「グリーンとタンを組み合わせて、迷彩柄にしたいんだろう。」
多分そうだろう、と私も思っていた。しかし、バックパックのBMFがACU迷彩やフォリエッジ色なのは、どう説明がつく?

戦闘服は森林迷彩。アーマーはタン。ポーチは緑。リュックは灰色。制式採用装備がこんなに統一感のないカラーコーディネーションなのは、国際部隊の中でも、フランス軍だけだろう。

アーマー本体には防弾プレートとソフトアーマーが内蔵され、ズッシリと重かった。プレートは防弾レベル「NIJ レベル4」で、敵がよく使うAK47の7.62mm弾にも対応しており、ソフトアーマーは、爆発物の破片や、ピストルやサブマシンガンの9mm弾から守ってくれる。

付属ポーチ類には弾倉ポーチや汎用ポーチ、無線機ポーチ、手榴弾ポーチなど、いろいろあった。皆、自分たちの使いやすいように、各種ポーチを配置した。使い慣れた自前のポーチを装着する者もいた。

私を含め、FAMASを持つほとんどの兵士に共通している配置は、弾倉ポーチの位置だ。アーマー前面、ちょうど腹の部分から、利き腕とは逆側の側面にかけて、弾倉ポーチを3つ、4つ、装着する。

こうすれば、利き手で銃把を握りながら、もう一方の手で、無理なく、弾倉をポーチから抜き、銃に差し込むことができる。利き手を銃把から放さないほうが、弾倉交換のあと、より素早く撃つことができる。

私は右利きなので、アーマー前面から左腕方向に向けて、弾倉ポーチを3つ並べた。ただし、パラクリート社の付属ポーチではなく、3年ほど前から使っている米国イーグル社の弾倉ポーチを装着した。色は、スモークグリーンによく似た「レンジャーグリーン」という色だ。

このイーグル社のポーチには、1つにつき、3本のFAMAS弾倉が収納でき、合計9本の弾倉を私はアーマーに保持することができる。パラクリート社のポーチには、2本しか弾倉が入らず、9本の弾倉を携行したい場合、5つのポーチが必要になる。弾倉ポーチ以外にも、アーマーに装着しなければならないポーチ類はたくさんある。そのためのスペースが要るので、イーグル社のポーチは重宝した。

弾倉をポーチに入れる向きには注意を要する。弾倉は、弾薬が見えるトップの部分を下向きに、なおかつ、弾丸が前を向くかたちでポーチに差し込む。そうすれば、弾倉をつまんで引き出し、手首を少し回したとき、銃に装着するのに正しい方向を向いた弾倉を手にしている状態となる。

この方法が標準的な弾倉収納方法となっており、私も新兵の頃に教わった。1度、不注意で逆向きに差し込んでいたのを見つかったことがある。「バカタレ!」と、頭を叩かれた。

あれから4年以上が経ち、今、アフガニスタン戦争で、弾倉をポーチに差し込んでいるのだが、怒られた当時と同じ向きで弾倉を入れた。トップが上を向いている。これには理由がある。

私は救急装甲車の運転手を務めることになっているのだが、運転席に乗り込むとき、どうしても弾倉ポーチの下部が車体内側にコンコン当たってしまう。標準的なやり方で弾倉を収納したら、トップの部分が固い車体で変形してしまい、装弾不良の原因となる。弾倉交換は速くできたが弾が出ない、という状況は訓練のときだけで結構だ。

そうなることを避けるために、敢えて差し込む方向を逆さにするのだ。弾倉交換には少々時間がかかるが、弾は出る。

アーマー組み立てPart1向かって左から、ナチェフ、私、ぺリシエ

アーマー組み立てPart1アーマー組み立てPart1
パラクリート社RAVフルセット

つづく
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Posted by 野田力  at 07:00 │Comments(5)アフガニスタン

この記事へのコメント
毎回大変興味深く拝見させていただいております。
装備について質問なのですが、各隊員はどの程度で個人装備の自由が与えられるのでしょうか?
Posted by goemonzaemon at 2012年07月20日 08:11
goemonzaemonさん
コメントありがとうございます。
個人装備の自由についてですが、階級や勤続年数、上司の許容性により変化します。
私の中隊では、中隊長がFAMASにアクセサリーを付けることや、ポーチやブーツなどの装備に私物を使うことを、アフガニスタンにおいては許していました。
下っ端の兵士たちが私物を使うことを許さない先輩兵士もいますが、私は5年以上勤務でしたし、中隊の衛生隊員の最先任でしたので、文句をいう人はいませんでした。
装備に関して、ここまで自由なのはアフガニスタンだけですね。フランス国内やアフリカでは、ここまで自由ではありません。
Posted by 野田力野田力 at 2012年07月21日 00:07
更新お疲れ様です。

また質問なのですがフランス国内や植民地では現在でもアークティス1601ベストや官給品のCE迷彩モジュラーベストやボディアーマーやスペクトラヘルは現役で使用されているのですか?
個人的にはISAFのちぐはぐ装備も嫌いじゃないですがやっぱCE迷彩装備で集めたいので参考にしたいのでご返答いただけるとありがたいです。

あとCE迷彩でMolle規格の装備品というのはフランス軍(外人部隊に限らず)で支給されているのですか?

いつも質問ばかりしてすみません。
Posted by TETSU at 2012年07月21日 19:23
TETSUさん

ボディアーマーやヘルメットはアフリカやフランス国内では現役で使われています。1601ベストや官給品ベストは、部隊によっては使っているところもあるとは思います。うちの連隊では使っていません。

支給品でCE迷彩のMOLLE装備は見たことないですね。

うちの連隊が採用しているアークティス社のCrossRigというMOLLEシステムの装備はOD色ですが、CE迷彩も存在します。
しかし、支給品ではなく、うちの連隊では買わされます。仏軍は貧乏なんです。

CrossRigは、チェストリグにも、ベルトキットにもなりますが、素材がやや脆く、MOLLEパネルの帯がちぎれたり、ポーチ側のパネルに差し込む帯の先についたスナップボタンが取れてしまったりしました。

どうせ自分で買わなければならないのなら、耐久性の高い装備を買ったほうがお得なので、うちの中隊ではブラックホーク社のRecon Chest HarnessのOD色を購入した隊員も多かったです。私はイーグル社のRhodesian Recon Vestのレンジャーグリーン色を購入しました。

当初、買わされたCrossRigは、サバゲ好きのフランス人民間人にプレゼントしました。
Posted by 野田力野田力 at 2012年07月22日 01:53
詳しい返答本当にありがとうございますm(_ _)m
教えていただいた品名検索してみて自分に合った装備を集めてみたいと思います。
Posted by TETSU at 2012年07月23日 10:28
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