2013年02月25日
新COP建設Part3
ミラン発射!50m・・・100m・・・150m・・・200m・・・。200mを越えて飛びつづける。やっと正常に作動してくれたか。今度こそいけるだろう。
“シュルシュルシュル・・・ボン、ボン、ボン・・・。”
なんと!落下・・・。調子よく飛んでいたのに、300mくらいのところで落下した。しかも、2回地面をバウンドしたあと、第3小隊隊の狙撃兵ヴェラメユー伍長とドルニック一等兵の伏せている地点からそう遠くない地面で止まったという。2人はスリーピングマットを無造作にたたみ、急いで現場から離脱しVABに戻った。
あっけないと言うか、面目ないと言うか、まるでアクションコメディ映画に出てきそうなギャグが現実に起きた感じだ。しかし、笑ってはいけない。
中隊長に無線が入った。
「ブラック、こちらサファイア。20mm機関砲で標的を撃てます。射撃許可をお願いします。」
「サファイア」とは1RHP(第1機甲パラシュート連隊)所属の20mm機関砲の搭載されたVABのコールサインだ。手動ではなく機械操作で機関砲や砲塔を動かし、射撃できる。護衛としてCOP建設隊とともに現場入りし、今度は戦闘中隊の応援に来てくれたのだろう。
「許可する。」
中隊長が答える。
“ダダダダン・・・ダダダダン・・・。”
M2機関銃の12.7mm弾の発射音よりもキレのある音が聞こえた。結局、ミランのかわりに20mm機関砲がコンパウンドを撃った。コンパウンドがどうなったか見えなかったが、無線で「標的処理成功」と報告がなされた。なんとか敵を撃破したらしい。
目標が達成されたのは良いことだが、それが第3中隊によるものでなかったので、少し不愉快だった。しかも同じころ、別の地点で第2中隊のミランが別のコンパウンドに命中し、敵2名を処理したという情報が後で入ってきた。
第2中隊のミランは命中し、第3中隊のミランは落ちた。競争ではないのだが、敗北感を感じ、くやしかった。一番くやしかったのは落下したミランの射手自身だったに違いない。
なぜミランは3発連続で落ちたのか?
あとで聞いたのだが、それらのミサイルは製造されてから10年以上が経過しており、古かった。そんなに古いミサイルは誤作動の可能性が高く、実弾射撃訓練に用いるのが普通だ。
2008年2月に私が参加したエリックスの実弾射撃訓練では、アフリカの紛争地に数年間配備されていたミサイルをフランスに戻したものを使用したのだが、射手6人のうち4人に誤作動が起きた。ミサイルが全く飛んでいかなかったり、すぐ目の前に落ちたり、途中まで順調に飛んでいたのに急に落ちたり・・・。
実際のところ、第3中隊の備品管理責任者の上級軍曹がFOBトラの弾薬支給担当者に「ミランが古い」とクレームをつけて、新しいものと交換を申し出ていたが拒否されていた。そしてこの有り様だ。そもそも古くなったミサイルがアフガニスタンに搬入されていること自体おかしい。
もしかして新しいミサイルが足りないのだろうか。外人部隊においても、正規軍においても、「装備が足りない」「装備が古い」「装備がボロい」と誰かが言うと、どこからともなく次のような答えが返ってくるのを聞くことがある。
「あたりまえだ。フランス軍なんだから。」
物資の豊かな米軍がうらやましい。
なお、私はミサイルに問題があったと思っているが、別のミラン射手のなかには射手のミスだという者もいた。「自分なら当てられた」と言う者もいたが、私はミランの教育を受けていないので何とも言えない。少なくとも、落下したミランの射手個人を非難するべきではない。彼は不真面目に撃っていたのではない。
その日の夕方、FOBトラから後方支援部隊のVABが来て、新しいミランミサイルを届けてくれた。次回は命中してほしい。
それにしても、実際の戦闘というものは思いのほか、うまくいかないものだ。今回はそのことをつくづく思い知らされた。
ミランの一件が落ち着いたあと、我々は帰還することなく、そのまま荒野のVABの中で一夜を過ごした。車内とは言え、夜は寒かった。昼は暑いくせに。VABには暖房機能があるが、ほとんど効き目がない。
私はヘルメットを脱ぎ、ニットキャップをかぶった。アーマーは暖かいので着たままだ。そのうえにダウンジャケットを布団のように、前面からかぶり、袖に腕を通した。上半身は大丈夫だったが、脚が寒く、膝とつま先は痛いほどだった。我慢するしかない。
あくまで敵性地域にいるため、ADU(中隊最先任下士官)のVAB、車両整備班のVAB、そして我々医療班のVABの乗員9名のうち、ADUを除いた8名で交替しながら、それら3台のVABの周りを警戒した。警戒以外のときは座ったまま眠った。ADUであるウィルソン上級曹長は車内の無線のそばで休んでいた。
こんな夜が6夜つづく。この任務では、まるまる6日間をVABで過ごすことになる。負傷したりして後送されなければの話だが。
↑陽が沈む前に同僚を記念撮影する。
つづく
“シュルシュルシュル・・・ボン、ボン、ボン・・・。”
なんと!落下・・・。調子よく飛んでいたのに、300mくらいのところで落下した。しかも、2回地面をバウンドしたあと、第3小隊隊の狙撃兵ヴェラメユー伍長とドルニック一等兵の伏せている地点からそう遠くない地面で止まったという。2人はスリーピングマットを無造作にたたみ、急いで現場から離脱しVABに戻った。
あっけないと言うか、面目ないと言うか、まるでアクションコメディ映画に出てきそうなギャグが現実に起きた感じだ。しかし、笑ってはいけない。
中隊長に無線が入った。
「ブラック、こちらサファイア。20mm機関砲で標的を撃てます。射撃許可をお願いします。」
「サファイア」とは1RHP(第1機甲パラシュート連隊)所属の20mm機関砲の搭載されたVABのコールサインだ。手動ではなく機械操作で機関砲や砲塔を動かし、射撃できる。護衛としてCOP建設隊とともに現場入りし、今度は戦闘中隊の応援に来てくれたのだろう。
「許可する。」
中隊長が答える。
“ダダダダン・・・ダダダダン・・・。”
M2機関銃の12.7mm弾の発射音よりもキレのある音が聞こえた。結局、ミランのかわりに20mm機関砲がコンパウンドを撃った。コンパウンドがどうなったか見えなかったが、無線で「標的処理成功」と報告がなされた。なんとか敵を撃破したらしい。
目標が達成されたのは良いことだが、それが第3中隊によるものでなかったので、少し不愉快だった。しかも同じころ、別の地点で第2中隊のミランが別のコンパウンドに命中し、敵2名を処理したという情報が後で入ってきた。
第2中隊のミランは命中し、第3中隊のミランは落ちた。競争ではないのだが、敗北感を感じ、くやしかった。一番くやしかったのは落下したミランの射手自身だったに違いない。
なぜミランは3発連続で落ちたのか?
あとで聞いたのだが、それらのミサイルは製造されてから10年以上が経過しており、古かった。そんなに古いミサイルは誤作動の可能性が高く、実弾射撃訓練に用いるのが普通だ。
2008年2月に私が参加したエリックスの実弾射撃訓練では、アフリカの紛争地に数年間配備されていたミサイルをフランスに戻したものを使用したのだが、射手6人のうち4人に誤作動が起きた。ミサイルが全く飛んでいかなかったり、すぐ目の前に落ちたり、途中まで順調に飛んでいたのに急に落ちたり・・・。
実際のところ、第3中隊の備品管理責任者の上級軍曹がFOBトラの弾薬支給担当者に「ミランが古い」とクレームをつけて、新しいものと交換を申し出ていたが拒否されていた。そしてこの有り様だ。そもそも古くなったミサイルがアフガニスタンに搬入されていること自体おかしい。
もしかして新しいミサイルが足りないのだろうか。外人部隊においても、正規軍においても、「装備が足りない」「装備が古い」「装備がボロい」と誰かが言うと、どこからともなく次のような答えが返ってくるのを聞くことがある。
「あたりまえだ。フランス軍なんだから。」
物資の豊かな米軍がうらやましい。
なお、私はミサイルに問題があったと思っているが、別のミラン射手のなかには射手のミスだという者もいた。「自分なら当てられた」と言う者もいたが、私はミランの教育を受けていないので何とも言えない。少なくとも、落下したミランの射手個人を非難するべきではない。彼は不真面目に撃っていたのではない。
その日の夕方、FOBトラから後方支援部隊のVABが来て、新しいミランミサイルを届けてくれた。次回は命中してほしい。
それにしても、実際の戦闘というものは思いのほか、うまくいかないものだ。今回はそのことをつくづく思い知らされた。
ミランの一件が落ち着いたあと、我々は帰還することなく、そのまま荒野のVABの中で一夜を過ごした。車内とは言え、夜は寒かった。昼は暑いくせに。VABには暖房機能があるが、ほとんど効き目がない。
私はヘルメットを脱ぎ、ニットキャップをかぶった。アーマーは暖かいので着たままだ。そのうえにダウンジャケットを布団のように、前面からかぶり、袖に腕を通した。上半身は大丈夫だったが、脚が寒く、膝とつま先は痛いほどだった。我慢するしかない。
あくまで敵性地域にいるため、ADU(中隊最先任下士官)のVAB、車両整備班のVAB、そして我々医療班のVABの乗員9名のうち、ADUを除いた8名で交替しながら、それら3台のVABの周りを警戒した。警戒以外のときは座ったまま眠った。ADUであるウィルソン上級曹長は車内の無線のそばで休んでいた。
こんな夜が6夜つづく。この任務では、まるまる6日間をVABで過ごすことになる。負傷したりして後送されなければの話だが。
↑陽が沈む前に同僚を記念撮影する。
つづく
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ミランミサイルの件、興味深かったです。
湾岸戦争の際、各国が 在庫兵器を処分代わりに実戦使用して不必要な攻撃が行われた疑惑報道を思い出しました。
米軍入隊という目的が明確で、英語ができるなら、できるだけ早くアメリカへ行き、市民権を獲得し、寄り道せずに米軍に入るのがいいと思います。
米軍のまえに自衛隊か外人部隊にどうしても行きたい場合、自衛隊のほうがいいと思います。
自衛隊には米軍と共通した技術も多いですし、米軍との同盟も強いです。
外人部隊は最低5年の契約で、米軍入隊を考えている日本人には長すぎると思います。米軍と一致している技術も少ないです。
グリーンカードが手に入るまでは自衛隊にいたいと思います。
来週のブログも楽しみにしてます。
通常この手のミサイルって発射筒を兼ねたチューブに不活性ガスと一緒に密封して炸薬や推進剤の劣化を防ぐ構造になっていると思うのですがやっぱ管理が悪いとダメになっちゃうんですかね?
ミランミサイルの記事を読んで、どこの国のミサイルでも同じような不具合があるのだと改めて思いました。 弾薬、特に誘導弾は思う以上にデリケートですね。 湾岸戦争終結時にSASがミランとステインガーを戦地処分したのを本で読んだ時はもったいないなあと思いましたが、今では理解できるような気がします。
管理にも気を使わなければならないでしょうし、使用期限もあるでしょう。
使用しなかったミサイルを戦地から祖国に輸送するのも金や手間がかかるうえ、どうせ国で実弾訓練に使うくらいなら、戦地での実弾訓練に使ったほうが合理的なんでしょうね。
それに、爆発物なので輸送に危険がともないます。「往復」させずに「往路」のみにしておけば、危険も半分なのでしょう。まあ、そうそう事故はおこりませんが。