2012年04月20日

バグラム航空基地 Part3

つい先日、4月15日・16日、アフガニスタンの首都カブールで、タリバンによる同時テロ攻撃があり、日本大使館にも合計5発のロケット弾が着弾したそうです。
ぜんぜん平和にならないですね。近い将来、国際部隊が撤退しても、戦いは続き、さらに激しい内戦に発展するのではないかと思えてしまいます。

さて、今回も「バグラム航空基地」の続きです。前回は、基地内にどんな施設があり、どんな人々を見たのかについて書きました。今回は、米兵と会話したときのことを書きたいと思います。
それでは、どうぞ。

――――――――――

バグラム滞在2日目、同じ兵舎に泊まっている米兵3人と英語で話をした。彼らの部隊は歩兵部隊で、1年間の任務を終え、2日後にアラスカの駐屯地に帰還するところだった。

私が、戦死者は出たかと聞くと、「戦闘は何度もあったけど、戦傷者も戦死者もなかったよ」と言う。それを聞いて、我々からも戦死者は出ないかもしれないと思った。

そこで、アフガンでの任務遂行のために、何かアドバイスはないかと尋ねると、細くて長身のドイツ系アメリカ人軍曹は言った。
「エイムポイントやEOテックを使うより、倍率の高い照準器を使う方がいい。我々のいた地域は山岳地帯だったんだけど、敵は遠くから撃ってくるから、倍率の高い照準器じゃないと見つけられないんだ」。

そう言って彼は、トリジコン社製の照準器の付いたM4A1小銃を私に手渡した。そのM4を天井に向けて構え、照準器を覗いてみる。倍率4倍くらいだろうか。天井が少し近くに見える。トリジコンを通して見える円形の光景には、中央に「∧」型の赤い印があり、その左右と真下に向かって、目盛りの付いた黒い線が伸びていた。

「Can I hold your FAMAS ? (FAMASを持ってもいいか)」
軍曹のとなりにいた中肉中背のヒスパニック系米兵2名のうちの1人が聞いてきた。私は「Yeah, sure(ああ、もちろんだ)」と言って、FAMASを手渡した。

その米兵が言った。
「FAMASには『トランペット』というニックネームがあるんだろ?」
私は答えた。
「いや、ない。アメリカの本にそう書いてあるのを見たことあるけど、単に『ファマス』って呼んでるよ。」
確かに形が似ているかもしれないが、私はFAMASがトランペットと呼ばれるのを聞いたことがない。

この時、この米兵達は初めてFAMASを手にしたのだが、私もM4は人生で初めてだった。M4は軽いし、思っていたよりも短く、弾倉がグリップより前に位置するので扱い易かった。FAMASより10㎝ほど長いだけなので、M4の方が絶対にいいと思った。一方、米兵たちは「FAMAS、すごく短いのに銃身が長いからいいなあ」と感心していた。お互いに「無い物ねだり」だ。

私は以前、いくつかの本や雑誌で、「M4は作動不良におちいりやすい」と書いてあったことを思い出し、聞いてみた。
「M4って、頻繁に作動不良起こすの?FAMASは、状態のいい弾倉を使えば、大体はちゃんと作動するんだけど・・・。」
「M4も同じだ。弾倉さえ変形していなければ、ちょっとくらい汚れていても、ちゃんと作動するよ。」
米軍軍曹がそう言っている横で、2人の兵卒が何度もうなずいていた。

バグラム航空基地 Part3バグラム航空基地 Part3トリジコン付きM4
バグラム航空基地 Part3バグラム航空基地 Part3トリジコンのレティクル
バグラム航空基地 Part3エイムポイント付きM4


 
私が話をした米兵たちは皆フレンドリーで、とても気分が良かったのだが、中には我々のことを快く思わない米兵もいたようで、トイレのドアに「仏軍パラシュート部隊はクソだ」と英語で書いた落書きがあった。

我々が大勢で到着し、シャワーなどの待ち時間が長くなったから嫌われたのだろう。残念だと思ったが、その横に別の落書きがあり、「実際に彼らを知るまでは、彼らがクソかどうかはわからない」、「書くことに気をつけろ。君はアメリカを代表しているのだから」と書かれていた。

我々をかばう落書きを見て、嬉しくなり、かばってくれた米兵に会いたいと思った。悪口の落書きを塗りつぶせば手っ取り早いが、敢えてそのままにするなんて、米社会では「言論の自由」が尊重されていることがよくわかった。


つづく

---------------
アフガニスタンで米軍部隊が経験した激戦の記録






同じカテゴリー(アフガニスタン)の記事画像
戦傷者Part6
戦傷者Part5
戦傷者Part4
戦傷者Part3
戦傷者Part2
戦傷者Part1
同じカテゴリー(アフガニスタン)の記事
 戦傷者Part6 (2013-08-26 07:00)
 戦傷者Part5 (2013-08-19 07:00)
 戦傷者Part4 (2013-08-12 17:16)
 戦傷者Part3 (2013-08-05 07:00)
 戦傷者Part2 (2013-07-29 21:11)
 戦傷者Part1 (2013-07-22 07:00)

Posted by 野田力  at 07:00 │Comments(6)アフガニスタン

この記事へのコメント
ファマス好きなのでこういう記事を楽しみに待ってました^^

1つ質問があるのですが仏軍のISAFの画像資料見てると官給品マウント使用せずローカルメイドにスコープ乗っけてたり並列アンダーレイルが付いてたり迷彩塗装してたりといろいろなファマスがありますが外装は自由にカスタマイズしてOKなのですか?
Posted by TETSUTETSU at 2012年04月20日 19:35
野田さんのブログ、毎回興味深く拝見させていただいております。
自分は現職の自衛官なのですが、野田さんの体験談は同じ戦闘員として、大変参考になります。
これからも、貴重な体験談をお聞かせください。
Posted by 名無し太郎 at 2012年04月20日 19:49
TETSUさん
銃のカスタマイズに関しては、少なくとも我々の中隊ではOKでした。EOテックやフォアグリップ、フラッシュライトなど、自分の好みのアクセサリーを付けている兵士たちは、それらを自費で購入していました。エイムポイントなら、制式採用されており、ほとんどの者に支給されるのですが・・・。
塗装に関しても、アフガンではOKでした。フランス国内やアフリカでは絶対に禁止のはず・・・。

つまり、カスタマイズは、そのときの中隊長の気まぐれで、OKになったりNGになったりするということです。
Posted by 野田力野田力 at 2012年04月20日 21:39
名無し太郎さん
コメント、ありがとうございます。自衛隊の皆さまに参考としていただける内容にするため、頑張ります。
防衛職務、ご苦労様です。これからも、平和のため、よろしくお願いします。
Posted by 野田力野田力 at 2012年04月20日 21:43
ゲリラが長距離射撃で使う銃はなんなんですか?
Posted by 馬嶋慶 at 2012年04月26日 15:19
馬嶋さん
ドラグノフ狙撃銃の使用が確認されてました。
Posted by 野田力野田力 at 2012年04月26日 22:02
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。