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Posted by ミリタリーブログ  at 

2012年11月05日

米軍特殊部隊との交流

私はVABから這い出て、ブラームと2人の米兵のもとへ駆け寄った。私はブラームの横に立ち、米兵と向かい合った。

「ハロー。」
私が挨拶をすると、ブラームが私を彼らに紹介した。
「彼の名前はノダで、日本人だ。そして、俺と同じく衛生兵だ。」
米兵の1人が握手のために手をさし出しながら言った。
「ジャックだ。僕らも衛生兵だ。」

ジャックは身長175㎝くらいで、細身だ。こげ茶色の髪をし、鼻ヒゲをたくわえている。まったく威圧感がなく、青く優しい瞳をしている。
「よろしく。」
私はそう言いながら、握手をした。もう1人の米兵も手をさし出した。
「テッドだ。よろしく。」

テッドは私と同じくらいの背なので身長165㎝くらいだろう。金髪に青い瞳で、鼻ヒゲだけでなく顎ヒゲも生やしている。見た目は威圧感がないどころか、弱々しさすら感じさせる。こういう雰囲気が逆に特殊部隊らしいと私は思う。マッチョに見えないほうが隠密作戦には適している。

テッドと握手を交わし終わると、ジャックが嬉しい提案をしてくれた。
「今夜、米軍セクターでバーベキューをやるから、もしよければ来てくれ。入口のボタンを押せば、誰かが開けに行くから。」
「ありがとう。仕事が済んだら行くよ。」
私がそう言うと、ブラームが言った。
「俺はまだわからないが、行けると思う。」
「じゃあ、待ってるよ。」
そう言うとジャックとテッドは歩き去った。

少ししか話せなかったが、すごい展開になったと思った。米軍特殊部隊のバーベキューに招待されたのだ。総理大臣の晩餐会に招かれるより、私は名誉に感じる。

その後、私とブラームは2時間ほど、診療所かVABのほうで整理整頓などをし、その日の仕事を終えた。他にも英語のわかる衛生隊員を誘ったが、我々2人以外には参加希望者はおらず、2人で米軍セクターへ直行した。

ジャックに言われたとおり、ボタンを押すと、当直の米兵が出てきて、中が広い居間になった建物に案内された。当直は、コヨーテブラウンのニットキャップとフリースジャケットを着用し、ジーパンをはいていた。小柄で細身なので、テッドよりも弱そうに見えるが、実際は私を無音で殺す格闘技術を持っているのだろう。

居間に入ると、20人くらいが、いくつかのテーブルの周りのイスやソファに座っていた。Tシャツにジ
ーパンなどの楽な服装を着て、コーラやDr.ペッパーを飲み、肉や焼きトウモロコシを食べながら、談笑している。

「よく来てくれた。肉はこっちだ。」
ジャックに声を掛けられ、私とブラームはついて行った。「ここにいろいろあるから、好きなだけ食べてくれ。」

居間の隅の洗い場のそばに、長いテーブルが置かれ、その上には、肉やトウモロコシ、ハッシュドポテトなどの入った金属製容器が並べられていた。プリップリのロブスターの身もあり、米軍の兵站能力に感心した。まさかアフガンの山岳地帯でロブスターにありつけるとは思ってもみなかった。イセエビなら親戚や友人の結婚披露宴などで食べたことがあるが、ロブスターは初めて口にする。

肉も、モロコシも、ポテトも、ロブスターも皿に盛り、Dr.ペッパーを1缶もらい、ジャックと、仏語を話す特殊部隊員ヴァ―ノンのいるテーブルにつき、バーベキューに舌鼓を打ちながら、談笑に加わった。ブラームは他のテーブルへ行った。

たわいもない話をたくさんしたが、話しが噛み合わなかった。例えば、「神戸牛のステーキは世界一うまい」と言われたが、私は食べたことがなかった。「日本のテレビ番組『サスケ』はおもしろい」とも言われたが、見たことがなかった。狩猟の話も出たが、私は猟銃免許を持っていない。

話がなかなか合わず、もどかしかったが、やがて戦闘衛生関連の話題になった。

←米軍セクターに向かって歩く仏兵

つづく


  


Posted by 野田力  at 07:00Comments(10)アフガニスタン